日銀利上げで内田副総裁が見せたセントラルバンカーの矜持/闘病あけ記者会見 その心中は

6月16日の利上げ決定後の総裁会見には入院中の植田総裁に代わって、内田副総裁が登場した(イラストはイメージ)
植田総裁は節目の決定会合にリモート参加せず
日銀は6月16日、政策金利を31年ぶりの高水準となる1.0%に引き上げた。その歴史的な節目となる金融政策決定会合(年8回開催、メンバーは総裁以下9人)に植田和男総裁の姿はなかった。
植田総裁は決定会合の1週間前の6月9日、肝嚢胞(かんのうほう)感染症と診断されて入院した。この感染症の症状は高熱や急激な腹痛が特徴だというから、発症直後に公務を執行することは難しい体調だったのだろうと推察される。
とはいえ16日の金融政策決定会合までには、まだ1週間という時間があった。にもかかわらず日銀は入院翌日に早々に、植田総裁が6月決定会合に欠席すること、7月会合には出席する意向であることを発表している。
本人の意向だったのだろうが、解せないところがある。日銀にとって極めて重要な政策金利1%という節目だ。植田総裁には無理を押してでも出席しようという意思はなかったのか。
というのも、昨年11月に白血病で入院した内田真一副総裁はそれとまったく異なる行動をしたからだ。昨年12月に日銀が政策金利を0.75%に引き上げた際に、内田氏は入院先の病院から東京・日本橋本石町の日銀本店に駆けつけた。ただし感染症を警戒して、決定会合が行われる円卓がある会議室に本人は入らず、自室からリモートで議論と採決に参加した。
内田氏はこの後の1月、3月、4月の各決定会合にもわざわざリモートで出席している。「現状維持」の平穏な決定会合であったにもかかわらず、病院からのオンライン参加をしたのだ。
日銀の決定会合でこういう運用は極めて異例だ。面倒な対応が必要になるからだ。内田氏のケースでは、日銀スタッフが内田氏が入院している病室まで行き、会議の情報が外部に漏れない状態であることを確認しながら、内田氏のオンラインでの会合参加をサポートした。内田氏は各会合で投票もした。
今回、植田総裁は決定会合に向けて、みずからの考えを文書で提出したものの、リモート参加まではしなかった。植田総裁と内田副総裁のこの対応の違いは、どこからくるのか。
まったくの私見だが、私は金融政策の「正常化」に向けた2人の「執念」の違いではなかったかと思う。