財政破綻が先送りされている⁉「伝説のディーラー」市場の深層を語る
藤巻健史氏インタビュー(前編)

藤巻健史氏(ふじまき・たけし) 1950年生まれ、一橋大学卒、三井信託銀行を経て、米モルガン銀行(現・JPモルガン・チェース銀行)入行。東京屈指のディーラーとしての実績を買われ、東京支店長兼在日代表。同行会長から「伝説のディーラー」と称された。2000年、世界的に著名な投資家ジョージ・ソロス氏のアドバイザーを務める。2013~19年、2024~25年に参院議員。現在はフジマキ・ジャパン代表取締役
「日銀破綻説」が権威ある国際経済誌に
藤巻健史氏は、マーケットも、政治の世界も、世界の見方も知る数少ない日本の経済専門家だ。さらに言えば、ふつうならなかなか言いにくい「不都合な真実」も、政権が嫌がる批判も遠慮せずに話せる、たいへん正直な人でもある。
アベノミクス・異次元緩和の開始当初からそれらを批判し続け、黒田東彦・前日本銀行総裁に対しては国会で厳しい質問を何度もぶつけ、嫌がられていた。そうした経緯も、記者の立場ではあるが同じようにアベノミクスや黒田総裁に批判的に対峙してきた私にとって、恐れながら「同志」のようにも思える人だ。
藤巻氏の財政破綻説、ハイパーインフレ説は一読すると過激に思われるかもしれない。だが、それがけっしてあり得ない妄想ではなく、現実に起きうるリスクだということは、金融をよく知る専門家たちであればあるほど否定できないだろう。
その証拠のひとつに、藤巻氏は昨年、世界的に権威のある経済誌「The International Economy」2025年春号に「円暴落で日銀は破綻し、日本は新しい中央銀行に移行せざるをえなくなる」という分析・予測を寄稿し、掲載されている。
同誌に掲載される論考の選考委員には、元FRB議長のアラン・グリーンスパン氏、元米財務長官のローレンス・サマーズ氏、元ECB(欧州中央銀行)総裁のジャン=クロード・トリシェ氏、世界的な投資家ジョージ・ソロス氏らがいる。米欧の著名な学者やエコノミスト、政府・中央銀行のトップ経験者たちの寄稿が多い経済誌であり、日本人執筆者の論考が掲載されるのは非常にまれだ。藤巻氏はその数少ない定期的寄稿者の1人である。
つまり藤巻氏による日本の「財政破綻・ハイパーインフレ」という超悲観論は、米欧の金融有識者たちにとって「耳を傾けるべき分析・予測」であるということになる。
最近の超円安、急激な長期金利の上昇は、その端緒の動きのようにも思えて不気味だ。当人は現状をどのように見ているのだろうか。忌憚のない解説を前後編2回のインタビュー記事としてお届けしたい。まずは前編では、財政破綻やハイパーインフレはやはり避けられないものなのか、改めて聞く。